逆指名・希望枠などの登場により、候補選手たちの運命を左右してきた抽選箱は90年代後半にはその役目を終え、もう2度と大学生・社会人選手の運命を左右する交差点の標識となることはないかと思われていた。
しかし近年の裏金問題等で、今年の大学生・社会人ドラフトは完全抽選。
再びその抽選箱の中にある交渉権獲得の札をかけて、競合する一昔前のドラフトと同じ雰囲気が漂っていた。
今年の注目は大場ではない!
抽選箱である!
まずは12球団のドラフト指名選手を書きあげていこう。
1.村田透(投手)大体大
3.古川祐樹(投手)明治大
1.山内壮馬(投手)名城大
1.白仁田寛和(投手)福岡大
3.石川俊介(投手)上武大
3.桑原健太朗(投手)奈良産業大
広島カープ
1.篠田純平(投手)日本大
4.岡本秀寛(投手)JFE西日本
4.村田和哉(外野手)中央大
3・根本朋久(投手)横浜商科大
3.久米勇紀(投手)明治大
1.長谷部康平(投手)愛知工業大
3.伊志嶺忠(捕手)東京情報大
1.平野将利(投手)JR東日本東北
3.藤原良平(投手)第一工業大
1.小林賢司(投手)青山学院大
以上34名
注目の東洋大・大場翔太は6球団競合が重複指名、名城大・長谷部康平も5球団が重複指名、大場は競合の末福岡ソフトバンクホークスが交渉権獲得、長谷部も競合の末東北楽天ゴールデンイーグルスが交渉権獲得。
重複指名がなかった1位選手は東京ヤクルトスワローズが指名した慶應大・加藤幹典だけであった。
さらに大場・長谷部の外れ指名でも重複が相次いだ。
日本大・篠田純平は巨人・広島・オリックスが、トヨタ自動車の服部泰卓は西武・ロッテ・日本ハムが競合。
篠田は広島カープが交渉権獲得、服部はロッテが交渉権獲得した。
大場・服部を共に外した北海道日本ハムは松坂世代で立教大学時代は「左の和田(現ソフトバンク)、右の多田野」と評されていた大リーガー・多田野数人を指名した。
完全抽選の復活により、1巡目は大物選手に人気が重複されていたため、「外れ1位」と呼ばれる選手たちも決して外れではなく実力のある選手が顔をそろえた。
指名選手一覧を見返してみれば、全指名選手36名に対し、捕手は楽天・伊志嶺ただ1人、半数近い5球団が指名選手が全員投手などポジション的にはだいぶ偏ったドラフト会議でもあった。
それだけ現在、どの球団も即戦力投手を必要としているということが明らかである。
ただ、それだけ多くの投手を指名しているだけに実力社会プロ野球で長い選手生活をおくっていくことは非常に難しいことでもある。
3年前の自由獲得枠で巨人に指名された三木均がわずか3年で戦力外通告(現在は育成選手)をうけたことからもその厳しさはわかる。
全候補の中から注目すべきだが、本当なら巨人が指名した加治前に期待したいのだが、外野手として巨人で出場することは数年間は難しいと思うので、あえてここは広島カープが指名した松山竜平を挙げたい。
外野手である松山は指名順位こそ低いが他のドラフト候補以上に出場のチャンスはあるはず。なぜなら広島で現在不動の外野手と言える日本人は前田智徳くらいだろう。しかしその前田も昨年は不振といわれ苦しんだ訳だが、来年の年齢37歳ということを考えれば年齢的な衰えがそろそろ見え始めているように感じる。
赤ゴジラとして04年首位打者に輝いた嶋重宣もブレイクした04年をピークに年々打率・本塁打・打点が落ちており、昨年に至っては105試合に出場し、打率.228本塁打14本打点48点と外野手のいない広島だからこそ試合に出場できる訳であり、このまま来季を迎えてしまえば非常に厳しい。
幸い今季シーズン途中に加入したアレックス・オチョアがいる訳だが、彼も来年36歳、03年来日時と比べれば自慢の強肩ももはや見る影もない。
近年出場機会が着実に増えている森笠も来年32歳。現状では主力外野手の年齢が全体的に高すぎる。
そう考えると広島カープの外野手の育成は急務であり、そうなるとやはりスラッガーとしては大学球界屈指の実力の持ち主である松山は、狭い広島市民球場で1年目からそこそこのホームランを打てる可能性を秘めている。
高校生ドラフトも終わり、大学生・社会人ドラフトも無事終わった訳だが、指名された選手たちは来季のプロへのスタートへ向けしっかり身体をつくり、万全の状態(怪我とかしないように)で1月の自主トレ、2月1日のキャンプインを迎えて欲しいものだ。