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野球本特集 其の一 野球本ことはじめ

最近では、おすすめの野球の本を教えてほしいと言ってくる野球仲間も少なくありません。

野球に対してこれだけ興味を持ってもらえているというのは非常にうれしく思っています。

さてそのような本の多くは『お勧めの技術書』という漠然としたものがほとんどです。


しかし、一言でお勧めと言われても非常に難しいものです。


近年の技術書の中には、『落合博満の超野球学』などのプロ野球選手の独自の技術論が書かれた書籍や、強豪校の練習が記されている書籍、そして初動負荷理論の小山裕史氏やシンクロ打法やうねり打法・ジャイロボールの手塚一志氏、立花龍司氏のトレーナーの方々が書かれた技術書が多く出版され、よく売れているのではないかと思います。(全体的にちょっと古いですが・・・)


その反面、基礎的なことが書かれている技術書が近年急速に少なくなってきているように感じています。

もともと野球技術書のほとんどが入門書や、基礎的な部分が多く書かれたモノが多かったと言えます。キャッチボールのやり方からはじまり、簡単なルールなどが書かれたものが最もスタンダードなものだったのではないでしょうか。


野球オタクの私は、技術書は日本に野球が伝来した直後の明治期のモノからつい先日発売されたモノまで非常に幅広く読んできました。


どれがイイ本なのかは人それぞれです。中には自分の経験があれば本なんか読む必要すらないという方もいました。

なので『お勧め本』は、あくまで私のお勧めでしかありません。
自分にあった本を見つけるのに一番イイのは、何が自分に必要かを知る必要があるのです。

 

そこで『野球の技術書』について数回にわたり少しずつ書いていきたいと思います。

今回は、野球が日本の本の中に登場した歴史を紹介していきたいと思います。



日本に野球が伝来は明治6年1873年)、東京にある開成学校の外国人教師ホーレス・ウィルソンとマジェットが開成学校の学生に教えたのが最初だと言われています。


実は野球のことはじめを研究するうえで、どこを野球のことはじめとするかというのは非常に難しいのですが現在では、この開成学校に伝来したのが日本の野球のことはじめの定説となっています。


当時の野球は主に学校で行われる遊戯であって、バットとボールだけで行われていて(もちろん素手)、もちろんルールブックなどもないので各自が独自のルールで行っていたと言われています。


明治9年(1876年)に平岡熙がアメリカから帰国し、本場で学んだ野球を披露し、明治11年(1878年)に平岡熙が新橋鉄道局で野球チームを結成した『新橋倶楽部』が日本最初の野球チームとなりました。


このままズラズラ書いてしまうと野球書籍のテーマから外れて日本の野球の歴史になってしまうので書籍に関わる歴史に戻りたいと思います。


さてここまで「野球」という単語を使ってきましたが、「野球」という単語はココまでの歴史の中には存在していませんでした。


そもそも「野球(やきゅう)」という単語が始めて使用されたのは明治28年(1895年)2月22日発行の『校友会雑誌号外 野球部史』です。



↑ 『校友会雑誌号外 野球部史』(画像は復刻版)


中馬庚が「ベースボールはフィールドで行うから野球」としたのがベースボールが「野球(やきゅう)」に訳されたことはじめとなります。


注意しなければならないのが、野球殿堂入りしている俳人正岡子規の幼名『升(のぼる)』を文字って『野球』という雅号を使用したことがありましたが、これは中馬庚の『校友会雑誌号外 野球部史』の発行された明治28年以前の明治23年(1890年)なのですが、これは『やきゅう』と呼んだのではなく、幼名の升(のぼる)から『野球(のぼーる)』と読んだ為、『野球(やきゅう)』という単語のことはじめは中馬庚であり『校友会雑誌号外 野球部史』となります。


このようにして明治期に日本へやってきた野球ですが、その明治期に発行された文献は約60冊と言われています。



その中で最も古い文献は、明治6年3月に発行された『小学読本巻一』という説が有力です。


『小学読本』はアメリカの教科書ウィルソン・リーダーを原本とする明治期の教科書で、ウィルソン・リーダーは福沢諭吉が輸入して翻訳したものです。



1861年発行のウィルソン・リーダー


この『小学読本巻一』では下記のようなページがあります。



その絵、その内容はまさに野球について書かれていて、当時まだ野球が伝来しているかしていないかという時代にアメリカのウィルソン・リーダーを翻訳した教科書だということを考えてみると、野球を知らない人々がどのように考えながら翻訳をして、どのように子供たちへ説明したかは非常に興味深いものです。ちなみに上記、写真は明治6年3月発行の『小学読本』のページですが、明治7年8月発行の『小学読本巻一』では同ページを下記のようになっています。



こちらの挿絵のほうが、より野球らしく感じられます。

ちなみに翻訳元のウィルソン・リーダーのページでは、このようになっています。





もちろん『小学読本』は日本最初に野球が紹介されている書籍ですが、野球の文字もなければベースボールとも書いてありません。

しかし内容や挿絵、翻訳元のウィルソン・リーダーのページからは明らかに野球について書かれていることが推測できます。

おそらく野球を知らない方々が一生懸命、本文から想像して作った文章・挿絵が明治6年という時代を感じさせます。


日本の野球は開成学校という教育機関からスタートしましたが、日本の野球書籍も『小学読本』という教科書からスタートしたのです。


その後、明治期はジワリジワリとベースボールが浸透していきます。



つづく



≪リンク集≫

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世田谷ハイタク労協野球大会ホームページ
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東京都世田谷区を中心に活動するキューバ人草野球チーム。
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