2015年、夏の高校野球も終わり、U18の野球ワールドカップが大阪府内で開幕した。
東海大相模の小笠原選手や関東一高のオコエ瑠偉選手はもちろん、1年生ながら清宮幸太郎選手(早稲田実業)も選出され、大きな注目を集めている。
そんな訳で今回から数日にわかり、高校野球について書こうと思う。
最近ではスピードガンで高校生投手の球速をはかることがごく自然な流れであるが、スピードガンが今の様に普及していない時代には投手を見る側の五感でその投手の球を知るしかなかった。
近年では、154キロだとか球速が出れば大騒ぎするが、正直言えば球速表示が遅い投手の球の方が速く見えることも少なくない。
これは初速と終速の差が影響すると言われている。もちろん打者にとってはその差が少ない程、速く見えるのだ。
昭和52年の夏の全国高校野球選手権大会は兵庫県の東洋大姫路が大会史上初の決勝戦サヨナラホームランで優勝が決まったこともあり往年の高校野球ファンには記憶に残る大会であっただろう。
その東洋大姫路の左腕エース・松本正志投手もまたスピードガンが普及していない時代の速球派として名を馳せた一人だった。
既に2年時から注目されていたが球速はかなりのものだったが、コントロールが悪いというダイヤモンドの原石であった。
今でこそ高校生投手も多くの変化球を駆使するようになったが、この頃まではストレート一本で甲子園までやってくる投手も少なくなかった。
それくらい素晴らしいストレートを持った投手がいたということだ。
松本投手は最後の1年間は毎日20キロの走り込みと300球の投げ込みで、その制球難を克服し3年生で最後の甲子園へやってきたのだ。
そして決勝戦では甲子園史に残るアイドル選手だったバンビこと坂本投手の東邦高校と対決。
2回に東邦に1点を先制されるが、東洋大姫路は4回に同点に。そのまま1対1のまま延長戦へ突入した。
10回裏に東洋大姫路はランナー2人を置き、4番で松本の女房役・安井のサヨナラ3ランホームランが飛出し全国制覇。
松本正志投手は延長10回を一人で投げ抜き、優勝投手となった。
その年のドラフト会議の主役は法政大学の江川卓投手だった。クラウンライターライオンズが江川卓投手を指名し、読売ジャイアンツが早稲田大学の山倉和博捕手を指名、続く阪急ブレーブスが松本正志投手をドラフト1位で指名し阪急入りした。背番号は阪急ブレーブスの大投手・梶本隆夫氏がつけていた33番。
プロ入り後は真面目な性格からコーチや関係者の助言を素直に聞き入れ、自らのスタイルを見失い、再び制球難が再発。
悩み過ぎで円形脱毛症を作ったほど、悩んだそうだ。
高卒1年目ながら日本シリーズに登板したが、3年目に初勝利を挙げるとそれがプロ野球で唯一の勝ち星になってしまった。
結局、プロ10年間(実働6年)でわずか1勝3敗、引退後は阪急・オリックスの裏方を務める。
プロ野球では活躍できなかったかもしれないが、甲子園史をひも解いてく中で決して忘れることのできない優勝投手の1人だ。
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