最近、テレビや新聞・雑誌などを見ていても『品格』や『常識』そして『道徳』など人間生活・社会生活を行っていく上での教育に関しての記事が目立つ。
しかし実際、何が『品格』であって、何が『常識』であって、何が『道徳』であるか、私は正直解らなかった。
恐らく世の中の多くの人がこの問題に対して同じような状況にぶち当たっているのだろう。
その証拠に「品格」「しきたり」というタイトルがついている本は軒並みベストセラーを記録している。
しかし、改めて考えてみる。
日本という国に生まれ、日本人としてより日本人らしい『道徳』や『品位』とは一体なんなのだろうか?
数年前、新渡戸稲造の『武士道』の話を書いたことがあったが、日本には昔からいくつもの「道徳」に関しての書物が発行されている。
どれを見開いても、何か一本の筋の通った内容であることは言うまでもない。
ではなぜ今を生きる日本人は、「品格」や「道徳」を探し続けているのだろうか?そして、なぜそれらは見つからないのだろう?
私見ではあるが道徳的な書物の多くは、明治時代や大正戦前までに書かれたモノがほとんどのように感じる。
実際、今の日本が求める道徳・品位とは戦後、アメリカ主導の戦後教育にあり、そこでは「戦前の教育」はアレルギー物質、タブーであった。
また戦後、時を経てみると近年では「道徳」的な話=宗教と勝手に決め付ける人も多くなり、事実上日本古来の道徳は絶滅危惧種であるように感じる。
そのため日本という国は戦前と戦後で全く違う国になったと言えるのではないかと思う。
今、私が読んでいる本は4冊ある。
それは江戸時代の儒学者・佐藤一斎が書いた『言志四録』(『言志録』『言志後録』『言志晩録』『言志耋録』の4書の総称)である。
一斎の弟子には佐久間象山や渡辺崋山といった幕末に活躍した人物がたくさんおり、『言志四録』はそんな一斉が約40年にかけて記した語録であり、その内容は「我々にとり、修養の糧として、また処世の心得としてまことに得難き好指導書」と本書の中で訳者は紹介している。
語録なので比較的読書する時間がない方でも読みやすく、内容も訳文・注釈があれば決して難しい書物ではなく、中学生以上だったらおそらく誰でも読めるだろう。
「品格」や「常識」は、時代によって大きく異なるが「道徳」的なものは時代や場所が変わってもほとんど変わらない。
日本には先人達が記した「武士道」や「言志四録」のような書籍がたくさんあるにも関わらず、残念ながらベストセラーになる可能性は低い。
話題になっている書籍だから売れているのか?それとも「品格」を求める人に売れているのか?どちらかはわからない。
現代では「言志四録」は指導者向けの本として有名であるが、読んでいて決して指導者だけのものではなく「品格」を求める方々も一読する価値がある本ではないかと思っている。
また日本古来より伝わる故事ことわざの一つ一つも、また先人達が後世へ伝えている道徳である。
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