80年代のアメリカ野球留学 - 世田谷草野球ロスヒターノス・ブログ

野球留学なんていうのが昔はありました。
野茂投手の大リーグ挑戦以降は減りましたが、それ以前は若手選手がアメリカ本土に1シーズン野球留学することは決して珍しい事ではありませんでした。

1986年4月、西武ライオンズの若手数名が1シーズン野球留学することになりました。
田辺徳男・そして大久保博元ら5選手。
カリフォルニア・リーグに所属するサンノゼ・ビーズ(San Jose Bees)。
このチームは当時西武ライオンズが4分の1の出資をしていたこともあり、選手を野球留学させていました。

今回、なぜこの1986年の西武ライオンズの野球留学にスポットライトを当てたかというと、大久保選手の登録名が珍しいものだったからです。

アメリカに引率した和田博美コーチの「日本語では太っている人をデブと言う」という話から、
大久保の登録名は「ＤＡＶＥ（デーブ）」になったのです。
大リーグ全体を見てみれば、愛称が登録名になることは珍しくありません。
ベーブ・ルース、ケーシー・ステンゲル、サイ・ヤング、ヨギ・ベラ、、、
日本でも近年増えてきていますがアメリカではニックネームが登録名にになっていることは決して少なくありません。
しかし、日本のプロ野球では「パンチ」「イチロー」の誕生した94年頃まではほとんど目にすることはありませんでした。
アメリカへの野球留学がなければ「デーブ大久保」という名称すら誕生していなかったかもしれません。

当時のベースボールカードを見てみても「ＤＡＶＥ　ＯＫＵＢＯ」としっかり書かれています。
そしてデーブの5か月142試合という過酷なＡ級での野球留学がスタートしました。

この当時のサンノゼ・ビーズの月給は500〜2000ドル。
最も高給取りはスティーブ・ハウ。日本の選手たちは全員月給700ドルでした。

ハンバーガーリーグと呼ばれるマイナーリーグ。
その過酷な環境で切磋琢磨したデーブは翌年のジュニアオールスターで見事ＭＶＰに輝き、92年の読売ジャイアンツ移籍後は強打の捕手として大活躍しました。
当時デーブのファンだった私は今でも思います！あのヤクルト戦での死球(手首を骨折)がなければ、デーブは球史に残る強打の捕手になっていたのではないかと・・・

１９９５年７月２４日、阪神大震災復興チャリティードリームゲームで実現したジャパンドリームズ(日本代表)ｖｓフォーリンドリームズ(来日外国人選手代表)の試合ではアメリカ時代の経験などから大久保はフォーリンドリームズの捕手として出場しました。

野茂英雄投手がメジャーリーグの扉を開けてからまもなく２０年。
同時にメジャーへの期待とは裏腹に、マイナーリーグの厳しい生活に耐えられずに日本のプロ野球に逃げ戻ってきてしまう選手も少なくありません。

最近ではハワイのウィンターリーグに参加する野球留学が多くなってきましたが、
80〜90年代にアメリカ本土で多く行われていた野球留学、バスに揺られ長距離移動しお金も自由にならない野球生活。
秋山幸二外野手も工藤公康投手も山本昌投手も木田優夫投手も皆、野球留学経験者です。
若い頃に異国の地で泥まみれになって経験する野球留学は日本プロ野球にとって必要なものなのかもしれません。