日米野球が終わってようやく野球界もオフシーズンに突入する。
シーズンオフというとこれからひと時の休息が与えられそうなニュアンスだが、オフシーズンと言葉を変えるだけでオフにも関わらず、色々と画策する時期のように感じさせられる。
そんな日米野球の熱狂も冷めやらぬこの時期にアメリカのオークションを眺めていたら日米野球ゆかりの品が出品されていた。
それは昭和9年(1934年)の日米野球でベーブ・ルースが使用していた帽子だ。
アメリカのスポーツグッズ鑑定会社グレイ・フランネル社のオークションに現在出品されている。
最低入札価格50,000ドル(約585万円)とかなりの高額に設定されていたが、既に2件の入札が入っており現在55,000ドル(約643万5000円)だ。
残りのオークション時間が23日あるので果たしてどこまでの値段がつくのか注目である。
この昭和9年の日米野球モノは日本開催だったこともあり日本にあるものも多い。
現在もオールアメリカンの寄せ書きサインボールが1個(150万円)で出品中。
昭和9年日米野球のパンフレットと当時の新聞の切り抜きや昭和6年の日米野球のパンフレットが日本の某大手オークションサイトに出品されていた。
ちなみに昭和9年の日米大野球戦パンフレットと新聞切抜きのセットが25万7000円で落札され、昭和6年の日米大野球戦パンフレットは15万6000円で落札された。
アメリカチームのものは比較的存在するのだが、日本チームのものは皆無に等しい。
特にユニフォームに関しては、井野川利春氏が使用したユニフォームに1000万円の値段が某鑑定番組でつけられたこともあった。
大学時代に沢村栄治の生前の動向を調べるべく、神田神保町のみならず巨大書店を転々として資料収集をしていた時期があった。
もちろんインターネットなど今のように膨大な情報量ではなかったので、足を使うしかなかった。
沢村栄治が何月何日にどこにいたのか?そんな詳細なことを調べていた。
同時に沢村栄治ゆかりの品を探し続けてきた。
幻の名投手・沢村栄治のゆかりの品。
手に入れようとは思っていない。むしろ、それが売っていたらとても私が買えるようなモノではない。
しかし、2004年のある記事では、マスコミにほとんど姿を現さない沢村栄治夫人と長女・洒井美緒さんがインタビューの中で答えていた。
戦中戦後の物資の少ない時代に、沢村栄治の2着あったユニフォームは長女・美緒さんの服となり、初代MVPのメダルは夫人の祖母の入れ歯になったそうだ。
幻の名投手の使用した用具は、すべて生活必需品に変わってしまったのだ。
しかし、よくよく考えてみれば食べるものにも困っていた戦後、いくら沢村栄治のユニフォームといえども衣食住に勝る訳がない。
私はこの記事を読んだ時、探し続けてきた野球殿堂ですら見たことのない幻の用具が存在しない事実を知り、残念に思ったのと同時に、幻の用具は、戦後まもない時期に最も価値のある日用品へと変わっていたのだと・・・
昭和9年の日米野球は日本にとってもアメリカにとっても野球史に残る大きな出来事だったことは言うまでもない。
しかしその歴史の1ページ以上に、その後の彼らの運命は壮絶なものであった。
スパイを貫き通した生涯だったモー・バーグ、帰国直後にヤンキースを去ったベーブ・ルース、筋萎縮性側索硬化症となりわずか5年後に他界したルー・ゲーリッグ・・・
日本選手たちは言うまでもなく数人が戦火に散った。沢村栄治は有名だが当時の名投手・青柴憲一と戦争のエピソードはドラマのような悲劇であった。(後日、このことに関しては書こうと思っている)
2年後に日本にはプロ野球が誕生し80年後の現在ではヤンキースの先発ローテーションを2人の日本人投手が支えている。
↑沢村栄治のサインボールと青柴憲一のサインボール。
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